50歳を過ぎると、ふと「残りの人生」について考える瞬間が増えませんか?
「自分が死んだら家族はどうなるのか?」という不安と同時に、「残りの人生を自分らしく豊かに過ごしたい」という願いも強くなってくる時期です。
人生100年時代と言われる現代において、ただ倹約して財産を残すだけが正解ではありません。自分の生活を守りながら、次世代へのバトンタッチもスムーズに行う。
今回は、50代から始める「老後の生活資金」と「相続対策」の両立について、資産管理と社会参加の両面から解説します。
人生100年時代の資産管理:「自分のお金」と「残すお金」を分ける
老後の不安をなくすために最も重要なことは、「自分の老後資金」と「家族に残すお金(相続財産)」を明確に分離して管理することです。
残りの人生を豊かに過ごすために
子孫に財産を残すことは大切ですが、そのために自分の今の生活を過度に切り詰め、味気ない余生を送っては本末転倒です。
『簡単相続ナビ』では、資産を以下の2つに色分けすることを推奨しています。
- 老後生活資金(自分のためのお金):自分が豊かに暮らすため、あるいは介護や医療に備えて使い切るお金。投資などで資産寿命を延ばす運用も検討。
- 相続財産(家族のためのお金):不動産や、確実に子供たちに残したい預貯金。早い段階から生前贈与や特例措置を検討する部分。
この2つを混ぜて考えてしまうと、「長生きすればするほど子供に残す分が減ってしまう」という罪悪感や不安に駆られてしまいます。
明確に分けることで、「ここまでは自分のために自由に使っていい」という安心感が生まれ、精神的に豊かなセカンドライフを送ることができるのです。
日本の人口推移と「長生きリスク」
なぜ資金の分離が必要なのでしょうか。それは日本の人口推移と平均寿命の延びが関係しています。
日本の総人口は減少傾向にあります。一方、今後15年間は65歳以上の高齢者は増加し続けます。
| 2020年 | 2025年 | 2030年 | 2035年 | 2040年 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 15歳~65歳未満 | 7,509万人 | 7,310万人 | 7,076万人 | 6,213万人 | 6,213万人 |
| 65歳以上 | 1,743万人 | 1,498万人 | 1,435万人 | 1,535万人 | 1,651万人 |
| 75歳以上 | 1,860万人 | 2,155万人 | 2,261万人 | 2,238万人 | 2,277万人 |
| 65歳以上合計 | 3,603万人 | 3,653万人 | 3,696万人 | 3,773万人 | 3,928万人 |
| 合計 | 11,112万人 | 10,963万人 | 10,772万人 | 9,986万人 | 10,141万人 |
※国立社会保障・人口問題研究所の推計より抜粋
2040年には高齢者人口がピークを迎えます。長生きすることは喜ばしいことですが、同時に「資産が尽きるリスク」も高まります。
だからこそ、早いうちにシミュレーションを行い、自分の生活を守るラインを確保しておく必要があるのです。
お金だけではない「社会とのつながり」という資産
老後の不安は「お金」だけではありません。「孤独」も大きなリスクです。
定年退職後、毎日会社に行く生活が突然なくなります。最初は「のんびりしたい」と思っても、それが10年、20年続くとどうでしょうか?
人付き合いが苦手で、会社以外に居場所がなかった方は、急速に行動範囲が狭まり、社会から孤立してしまう恐れがあります。
高齢者の孤独死の現状
近年、高齢者の孤独死は社会問題となっています。
2024年に警察庁が初めて公表したデータによると、一人暮らしの自宅で亡くなった65歳以上の高齢者は年間約6万8千人と推計されています。


更に、地域別でみると以下の通りです。

原因としては、核家族化や未婚率の上昇に加え、近所付き合いの希薄化が挙げられます。
孤独死を防ぐためにも、家族以外の「自分の意思を託せるつながり」や「居場所」を元気なうちに作っておくことが、無形の資産となります。
「社会参加活動」のススメ
そこでおすすめなのが、ボランティアやNPO、町内会などの「社会参加活動」です。

60代の約43.6%は何らかの社会活動に参加しています。参加理由は「社会や人の役に立ちたい(48%)」が最も多く、次いで「時間的余裕(25%)」「交流したい(20%)」と続きます。

お金にはならなくても、自分のペースで参加でき、嫌なら辞められる気楽さがあります。
社会とつながりを持つことは、心身の健康を保ち、結果として「資産寿命(医療費の抑制)」を延ばすことにもつながります。
「社会参加活動」に参加しない方の理由は以下の通りです。

家庭の事情、気軽に参加できる活動が少ない、どの様な活動が行われているか知らないなどの理由であるため、高齢者が「社会参加活動」に気軽に参加できる様な活動を広めていく事が重要です。
まとめ:50代からの「人生総括」
老後の不安を解消するためには、以下の3つのステップが重要です。
- 資産の分離:「自分の生活資金」と「相続財産」を明確に分ける。
- 資産寿命の延伸:自分の資金を適切に運用し、長生きリスクに備える。
- 社会とのつながり:お金以外の居場所を作り、孤立を防ぐ。
相続税の計算や資産のシミュレーションは、専門家に依頼すると高額な費用がかかることもあります。
まずはご自身で現状を把握するために、簡単なシミュレーションから始めてみてはいかがでしょうか。
今のうちから「お金」と「心」の両面で準備をしておくことが、あなたとご家族の未来を守ることにつながります。




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