法人税はいくら?計算式とシミュレーションで概算を把握!

「今期は利益が出そうだが、法人税はいくらになるのか?」「赤字でも税金は払う必要があるのか?」

経営者にとって、決算時の納税額は資金繰りに直結する重大な関心事です。

また、将来的に事業承継(M&Aや親族内承継)を考えている場合、法人税の仕組みを理解しておくことは必須です。なぜなら、支払う税金によって手元に残る現金が変わり、それが「自社の株価評価」に大きく影響するからです。

この記事では、会社が支払う税金の種類と計算方法、そして具体的な数字を使ったシミュレーションについて、専門用語をできるだけ噛み砕いて解説します。

目次

会社が支払う税金の種類とタイミング一覧

まずは全体像を把握しましょう。会社が支払う主な税金は以下の通りです。これらを支払うために、計画的な資金確保が必要です。

税金の種類概要支払うタイミング
法人税会社の「所得」にかかる国税決算日の翌日から2ヶ月以内
法人住民税事業所がある自治体に支払う地方税決算日の翌日から2ヶ月以内
法人事業税事業を行うことに対して支払う地方税決算日の翌日から2ヶ月以内
地方法人税国税だが、地方交付税の財源となるもの決算日の翌日から2ヶ月以内
消費税預かった消費税を納付決算日の翌日から2ヶ月以内
源泉所得税給与等から天引きした税金原則翌月10日まで
固定資産税土地・建物・償却資産にかかる税金年4回(4・7・12・2月頃)
印紙税契約書等の作成時にかかる税金文書作成時

この中で、決算書の内容(会社の儲け)に連動して金額が決まるのが、いわゆる「法人3税(法人税・法人住民税・法人事業税)」です。

法人税の計算基礎:利益と所得の違い

法人税を計算する際、最も重要なのが「会計上の利益」と「税務上の所得」は違うという点です。

  • 会計上の利益:収益 - 費用 = 利益(決算書の数字)
  • 税務上の所得:益金 - 損金 = 所得(税金計算用の数字)

例えば、交際費の一部や役員への過大なボーナスなどは、会計上は「費用」ですが、税務上は「損金(経費)」として認められない場合があります。そのため、「決算書上の利益よりも、課税される所得の方が高くなる」ケースが一般的です。

法人税の計算方法

法人税額=課税所得×法人税率-控除額

※法人税率は一律23.2%です。
但し、​下記2つの条件を満たす場合は、税率が15%に下がります。
・年800万円以下の所得金額
・資本金が1億円以下の中小法人

注意点としては、会社の「利益」ではなく「所得」に対して課税されること。

所得は「益金ー損金」の計算で求められます。

法人事業税の計算方法

法人事業税額=所得×法人事業税率

法人事業税率は、

  • 法人の種類
  • 課税所得
  • 事業開始年度

によって異なります。

また、各都道府県によっても税率は異なるため、地方自治体のホームページで事前に確認しておきましょう。

消費税の計算方法

消費税の計算方法は、下記のとおりです。

消費税=売上の際にお客様から預かった消費税ー経費で外部に支払った消費税

なお、消費税は2年前の課税売上(消費税がかかる売上)が1,000万円を超える場合にのみ、納税義務が発生します。

【実例】法人税の計算シミュレーション

では、実際にいくら税金がかかるのか計算してみましょう。

中小企業(資本金1億円以下)の場合、所得800万円以下の部分には軽減税率が適用されるため、計算は少し段階的になります。

シミュレーションの前提条件

  • 法人の区分:普通法人(資本金5,000万円)
  • 会計上の利益:2,000万円
  • 申告調整:プラス100万円(損金不算入の交際費など)
  • 課税所得:2,100万円

ステップ1:法人税額の計算

中小企業の場合、以下の2段階で計算します。

  1. 800万円以下の部分(税率15%) 800万円 × 15% = 120万円
  2. 800万円超の部分(税率23.2%) (2,100万円 - 800万円) × 23.2% = 301万6,000円

合計法人税額:421万6,000円

ステップ2:その他の税金を含めた総額

法人税だけでなく、地方法人税や事業税、住民税も加わります。これらを合算した負担率を「実効税率」と呼びます。

中小企業の実効税率は約33〜34%程度が目安です。

概算納税額(目安):

課税所得 2,100万円 × 約34% = 約714万円

このように、利益の約3分の1は税金として支払う必要があると想定しておきましょう。

簡単に概算を知る方法(実効税率)

「細かい計算はいいから、ざっくりいくら用意すればいいか知りたい」という場合は、以下の計算式を使ってください。

概算納税額 = 税引前当期純利益 × 34% + 7万円

  • 34%:中小企業の実効税率の目安です。
  • 7万円:法人住民税の「均等割」です。赤字でも必ずかかる最低金額です(自治体や資本金により異なります)。

赤字なら税金は払わなくていい?

「赤字なら税金ゼロ」というのは半分正解で、半分間違いです。

赤字でも支払う必要がある税金

利益が出ていなくても、以下の税金は納付義務があります。

  • 法人住民税(均等割): 最低年間7万円程度。会社が存在しているだけでかかる税金です。
  • 消費税: 赤字かどうかに関係なく、預かった消費税と支払った消費税の差額を納付します。人件費が多い会社などは、大赤字でも消費税の負担は重くなる傾向があります。

赤字の場合、支払わなくていい税金

  • 法人税
  • 法人事業税
  • 法人住民税(法人税割部分)

また、青色申告をしていれば、赤字額を翌年以降(最大10年間)に繰り越して、将来の黒字と相殺(節税)することが可能です。

まとめ:正確な納税額の把握は事業承継の第一歩

法人税の仕組みと概算方法について解説しました。

適正な納税を行い、内部留保(利益の積み上げ)を増やしていくことは会社の財務体質を強くします。一方で、利益が積み上がると自社株の評価額が高くなり、将来の相続税や事業承継時のコストが増大するという側面もあります。

「今の納税額」だけでなく、「将来の株価評価」まで見据えた決算対策を行うには、専門的な知識が必要です。

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以下の記事では、税務処理に詳しい税理士をご紹介していますので、ご参考にして下さい。

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