養子縁組を活用して相続税を節税対策!養子縁組の対策は大きな節税効果?

養子縁組すると節税対策になる?

養子縁組をすることで相続人を増やすと相続税に節税対策になります。

しかしながら、戸籍をイジることは、中々勇気と決断が必要ですよね。

実際の所、相続税がどのくらい節税できるのでしょうか?

また、養子縁組することでのデメリットは何があるのでしょうか?

今回は、節税対策で養子縁組することのメリット・デメリットを紹介します。

目次

養子縁組をすることのメリット

孫を養子縁組すると、相続税対策になると聞きました。本当ですか?

養子縁組をすると、基礎控除額を増やすことが可能なので相続税を大幅に減らす効果があります。

しかしながら、場合によっては、養子縁組をすると逆に相続税が跳ね上がるケースも存在します

また、税務署から養子縁組の理由が節税対策であると疑われてしまう可能性があります。

税務署に養子縁組を認めてもらえないと、「多額の追徴課税」を請求されてしまうし、戸籍に傷を付けてしまうだけでメリットが全く亡くなってしまいます。

相続税計算で増やすことが可能な養子の数

相続税は相続人が多いほど、税額が少なくなるという性質があります。

このため、子供を被相続人の養子にすることにより相続人数が増加するため、基礎控除額が増えて相続税が節税されます。

なお、民法上は、養子は何人でもとることができますが、相続税を計算する場合には、養子を相続人にカウントできる人数は、

  • 実子がいる場合には、養子は一人まで
  • 実子がいない場合には、養子は二人まで

と、決められています。

ただし、例外が存在します。

「特別養子縁組」の場合は、実子と同じように何人でも法定相続人の数にカウントすることが可能です。

特別養子縁組

特別養子縁組とは、実親との親子関係を終了させ、養親と新たに親子関係を結ぶ制度です。

こちらは実親が子どもを育てられない場合などに子の福祉・利益を図る目的があり、6歳までの子どもを対象としています。一般的に再婚の連れ子との養子縁組は「普通養子縁組」が行われています。

  • 代襲相続人である孫等を養子にした場合

普通養子縁組

普通養子縁組とは、実親との親子関係を続けたまま、養親とも親子関係を結ぶ制度です。

当事者で養子縁組に合意したあと、市区町村役場に養子縁組届を提出すると成立します。

ちなみに普通養子縁組では実親との親子関係は続くので、養子は実親から相続する権利を失いません。

例えば、実の父母が離婚して母に引き取られ、母が再婚してその相手の養子になった人の場合、実の父からも新しい父からも遺産を相続する権利があるのです。

  • 配偶者の実の子を養子縁組した場合(いわゆる連れ子養子)

養子が1人増えることによる相続税の計算例

例えば、相続財産が2億円の配偶者と子供1人の家族に対して計算します。

生命保険の加入が無い場合

養子が居ない場合

相続財産:2億円

基礎控除額=3,000万円+600万円x2人=4,200万円

課税遺産総額=相続財産 ー 基礎控除額
=2億円 ー 4,200万円=1億5,800万円

配偶者の課税遺産額=7,900万円
子供(実子)の課税遺産額=7,900万円

この金額から相続税を計算すると

配偶者の税額=1,670万円
子供(実子)の税額=1,670万円

この金額に対して「配偶者の税額軽減の1億6,000万円」の控除を適用すると納税額の合計金額は、

納税額の合計金額=1,670万円

相続税としてこの家族は、1,670万円の相続税を支払うことになります。

養子が1人増える場合

相続財産:2億円

基礎控除額=3,000万円+600万円x3人=4,800万円

課税遺産総額=相続財産 ー 基礎控除額
=2億円 ー 4,800万円=1億5,200万円

配偶者の課税遺産額=7,600万円
子供(実子)の課税遺産額=3,800万円
子供(養子)の課税遺産額=3,800万円

この金額から相続税を計算すると

配偶者の税額=1,580万円
子供(実子)の税額=560万円
子供(養子)の税額=560万円

この金額に対して「配偶者の税額軽減の1億6,000万円」の控除を適用すると納税額の合計金額は、

納税額の合計金額=1,120万円

相続税としてこの家族は、1,120万円の相続税を支払うことになります。

5,000万円の生命保険に加入していた場合

相続財産が2億円の内生命保険の死亡保険金が5,000万円というケースです。

養子が居ない場合

相続財産:2億円(内 死亡保険金5,000万円)

基礎控除額=3,000万円+600万円x2人=4,200万円

生命保険控除=500万円x2人=1,000万円

課税遺産総額=相続財産 ー 基礎控除額 ー 生命保険控除
=2億円 ー 4,200万円 ー 1,000万円 =1億4,800万円

配偶者の課税遺産額=7,400万円
子供(実子)の課税遺産額=7.400円

この金額から相続税を計算すると

配偶者の税額=1,520万円
子供(実子)の税額=1,520万円

この金額に対して「配偶者の税額軽減の1億6,000万円」の控除を適用すると納税額の合計金額は、

納税額の合計金額=1,520万円

相続税としてこの家族は、1,520万円の相続税を支払うことになります。

養子が1人増える場合

相続財産:2億円(内 死亡保険金5,000万円)

基礎控除額=3,000万円+600万円x3人=4,800万円

生命保険控除=500万円x3人=1,500万円

課税遺産総額=相続財産 ー 基礎控除額 ー 生命保険控除
=2億円 ー 4,800万円 ー 1,500万円=1億2,600万円

配偶者の課税遺産額=6,850万円
子供(実子)の課税遺産額=3,425万円
子供(養子)の課税遺産額=3,425万円

この金額から相続税を計算すると

配偶者の税額=1,355万円
子供(実子)の税額=485万円
子供(養子)の税額=485万円

この金額に対して「配偶者の税額軽減の1億6,000万円」の控除を適用すると納税額の合計金額は、

納税額の合計金額=970万円

相続税としてこの家族は、970万円の相続税を支払うことになります。

養子が1人増えることでの節税効果の検証

上記の計算例の内容をまとめると以下の様になります。

相続財産額[万円]相続税[万円]
配偶者実子養子配偶者実子養子合計
生命保険
控除なし
養子なし5,0005,00001,6701,670
養子あり5,0002,5002,50005605601,120
生命保険
控除あり
養子なし5,0005,00001,5201,520
養子あり5,0002,5002,5000485485970

養子が増えることにより、合計の相続税は確かに削減されますが、実子は受け取る相続財産額が減ってしまいます。人数が増えたので分け前が減って当たり前ですよね。

生命保険控除を考慮しても僅か550万円(1.520ー970)の差額です。
実子は、養子が居ない場合には、3,480万円(5,000ー1,520)受け取れますが、養子が居ると2,015万円(2500ー485)しか受け取れないことになってしまいます。

遺留分を考慮して、実子に3,750万円、養子に1,250万円と以下の様な取り分に分割したとしても3,023万円(3,750ー727)となってしまうので、実子の取り分が少なくなってしまいます。

相続財産額[万円]相続税[万円]
配偶者実子養子配偶者実子養子合計
生命保険
控除あり
養子あり5,0003,7501,2500727243970

このため、相続税の節税のためだけに、法定相続人でない人間を養子に迎えるというのは実子に取ってはメリットが無いと言わざる終えません。

なお、養子縁組が相続税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合、養子を法定相続人の数に含めることはできません。

相続税の負担を不当に減少させる結果」とは、例えば相続開始直前に養子縁組を行い、かつ、その養子に遺産をまったく相続させないような場合には、相続税を減らす目的だけで行った養子縁組と判断される可能性があると考えられます。

孫を養子にすることのメリット?

しかしながら、孫だった場合にはどうでしょうか?

孫を養子に迎えると、少なくとも孫にそのまま相続財産を渡すことができるので将来の相続を一代飛ばすことが可能となります。

ただし、以下の様な弊害も発生します。

  • 孫の名字が変わってしまう可能性がある。
    同じ苗字であれば廻りもそんなに気づかないかも知れませんが、戸籍上親と兄弟になってしまいます。
  • 遺産分割協議で揉めるリスクが高まる。
    子供に兄弟がいて1人の子供の孫を養子にすると他の兄弟の取り分が少なくなります。
  • 相続税の2割加算により損につながる可能性がある。
    以下の表を参照下さい。
  • 租税回避行為として否認される可能性があること
    合法でも否認されることがあります。

以下は、孫養子により2割加算が適用された場合です。

相続財産額[万円]相続税[万円]
配偶者実子養子配偶者実子養子合計
生命保険
控除あり
孫養子5,0002,5002,50004855821,067

相続税の合計額が970万円から1,067万円となるため、97万円税額が増えることになります。

資産規模が3億円を超えてくるような方は、2割加算をされたとしても、子供に相続させずに、遺言や養子縁組を利用して、孫に財産を承継させた方が、一族全体の相続税の負担が少なくなることがあります。

かなり大きな地主さんたちは、このような対策をしておかないと、孫の代で相続税が払えなくなるリスクも十分考えられます。

しっかりとしたシミュレーションを組んだうえでご検討していただく分には、良い対策だと思います。

甥や姪を養子にすることで紛争が発生!

例えば、親が既に死んでいる、子供がいない夫婦の夫が亡くなった場合には、その遺産は、妻と夫の兄弟姉妹に相続権が存在します。

この時、兄弟姉妹も既に亡くなっていた場合には、その子供である甥や姪が相続人となります。

甥や姪が全部で5人居た場合には、妻と甥や姪の5人が法定相続人となる訳です。

しかしながら、夫が生きている内に、夫婦の間に子供が居なかったので、未だ小さい姪の1人を引き取って養子とすることにしました。

この時、法定相続人は替わります。

法定相続人は、妻と養子にした姪の2人になります。

それ以外の4人の甥や姪は相続人の権利が無くなってしまうのです。

養子となった姪は、夫の財産の半分を取得できることになる訳です。

この様なことから、甥や姪の間で紛争が起こってしまうことがありますので、養子を取る場合には相続に対する配慮にも十分注意する必要があります。

なお、この場合には、相続人が6人から2人に減ったので、相続税の総額は増えることになります。
更に、配偶者の取り分も3/4から1/2に減ってしまいます。

甥や姪に均等に財産を残して上げたいと考えるのであれば、養子を取るのではなく、初めから遺言書に「甥と姪に財産を残す」と書いておけば、財産を渡したい人に渡すことが可能です。

贈与税に2割加算の制度はありまあせん。

相続税と異なり、贈与税には2割加算のような制度はありません。

代を飛ばして相続させることを検討されている方は、2割増しの相続税を払うより、贈与税を払った方がお得になる可能性が高いので、早めに検討していただいた方がいいかもしれません。

贈与の110万円の控除枠を使用すれば、孫や甥、姪のそれぞれに対して10年間で1人あたり1,100万円も無税で渡すことが可能です。

まとめ

孫を養子にすると確かに相続税は減りますが、苗字が変わってしまうことや、孫養子の場合には相続税の2割加算があったり、養子にとった孫にも遺留分が発生したりと、いろいろと他の問題もでてきます。

  • 配偶者・子供・親以外の人が財産を相続する場合には、相続税は2割加算される
  • 養子は原則として2割加算の対象とならないが、孫(曾孫)を養子にした場合には2割加算される
  • 2割増しの税金を払っても、代を飛ばした方が有利になるケースもある

様々な角度から検証してから最終的に判断していただくことをお勧めします。

養子縁組をして法定相続人が増えれば、実子などのもともといた相続人の相続分が減ることになります。後から養子になった人に、「財産を取られた」と感じる実子も出てくるかもしれません。

安易な養子縁組は、相続税は減らすことができても“紛争”のタネになることがある点にもご注意ください。

相続対策として養子を取る場合には、相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

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以下の記事では、税務処理に詳しい税理士をご紹介していますので、ご参考にして下さい。

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