不動産相続トラブル事例!「誰が相続するか」で税金が1000万円変わった話

「親や兄弟が立て続けに亡くなってしまった…」 このような不幸が重なるケース(数次相続)では、悲しみに暮れる間もなく複雑な相続手続きに追われることになります。

しかし、ここで**「誰がどの順番で相続するか」を間違えると、後で不動産を売却する際に1000万円以上も損をする**可能性があることをご存知でしょうか?

今回は、実際の相談事例をもとに、遺産分割の工夫だけで税金をゼロにした驚きの解決策をご紹介します。


目次

1. 事例の概要:兄弟が立て続けに亡くなった

相談に来られた方の状況は以下の通りです。

  • 被相続人1(兄): 最初に死亡。財産は実家(空き家・評価額4,800万円)。
  • 被相続人2(妹A): 兄の相続手続きが終わらないうちに死亡。兄の実家に住んでいた。財産は預金3,000万円。
  • 相続人(妹B・妹C): 兄と妹Aの財産を相続する。持ち家はなく賃貸暮らし。

【相談内容】 「兄の家はもう誰も住まないので売却して、お金を2人で分けたい」


2. 一般的な提案(失敗パターン)

まずは、何も対策せずにシンプルに相続した場合を見てみましょう。

提案内容

  • 兄の不動産 ➡ 妹B・Cが直接1/2ずつ相続する
  • 妹Aの預金 ➡ 妹B・Cが1/2ずつ相続する

税金の計算結果

【相続税】

  • 兄の相続:基礎控除以下で0円
  • 妹Aの相続:基礎控除以下で0円 「相続税がかからないなら、これでいいのでは?」と思いがちです。

【譲渡所得税(売却時の税金)】 しかし、相続した不動産を売却する時に問題が起きます。

  • 売却価格:6,000万円
  • 取得費(概算):300万円(売値の5%)
  • 譲渡益:5,700万円
  • 税金(約20%):約1,140万円

なんと、売却益に対して約1,140万円もの税金が発生してしまいます。これが「一般的な提案」の落とし穴です。


3. 専門家の提案(成功パターン)

そこで、相続専門の税理士が提案したのは、**「兄の不動産を、一度『亡くなった妹A』が相続する形にする」**という方法です。

「えっ?亡くなった人が相続できるの?」と思われるかもしれませんが、数次相続(遺産分割協議中に相続人が亡くなった場合)では、亡くなった人の地位を引き継いで、その人名義で遺産分割を成立させることが可能です。

提案内容

  1. 兄の不動産 ➡ 亡くなった妹Aが相続する(形をとる)
  2. その不動産を ➡ 妹B・Cが妹Aから相続する

なぜこの方法が良いのか?(2つの特例)

このルートを通すことで、以下の強力な特例が使えるようになります。

① 空き家特例(譲渡所得の3,000万円控除)

妹Aは兄の家に住んでいました。そのため、妹B・Cが「妹Aが住んでいた家」を相続して売却することになり、**「空き家特例」**の要件を満たします。

  • 妹B:3,000万円控除
  • 妹C:3,000万円控除 ➡ 合計6,000万円まで売却益が非課税になります!

② 小規模宅地の特例(家なき子特例)

妹Aから妹B・Cへの相続において、妹B・Cは持ち家がない(賃貸暮らし)ため、**「家なき子特例」**として土地の評価額を80%減額できます。 これにより、妹Aの遺産総額(不動産+預金)が増えても、相続税はかかりません。


4. 最終的な税金の違い

項目一般的な提案専門家の提案
相続税0円0円
譲渡所得税(売却時)約1,140万円0円
手残り財産減る1,140万円多い!

このように、遺産分割のやり方を少し変えるだけで、税金が1,140万円も安くなり、手元に残るお金が大幅に増えました。


まとめ

不動産相続は、単に「分ければいい」というものではありません。 特に、相続した不動産を売却する予定がある場合は、**「誰が相続すれば特例が使えるか(空き家特例など)」**をシミュレーションすることが不可欠です。

「とりあえず法定相続分で」と安易に決めてしまう前に、相続に強い専門家へ相談することをおすすめします。

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以下の記事では、税務処理に詳しい税理士をご紹介していますので、ご参考にして下さい。

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