地域地区とは?21種類の分類と用途地域の建築制限を解説

「地域地区」とは、都市計画法に基づいて定められた、土地の利用目的や建てられる建物の種類などを規制するエリアのことです。

土地の相続税評価や、その土地にどのようなアパート・マンションが建てられるか(土地活用)を考える上で、自分の土地がどの地域地区に属しているかを知ることは非常に重要です。

この記事では、地域地区の全21種類の分類と、最も身近な「用途地域」の制限についてわかりやすく解説します。

目次

地域地区とは?都市計画区域内の土地を21種類に分類

地域地区とは、都市計画区域内の土地を、どのような用途に利用するべきか、どの程度利用するべきかなどを定めて21種類に分類したものです。

日本の国土は、無秩序な開発を防ぐために「都市計画法」という法律でルールが決められています。

街を創るためには都市計画が必要

表にしてまとめると次のようになります。

B  土地利用②区域区分市街化区域、市街化調整区域
③地域地区用途地域第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域
特別用途地区、高度地区、高度利用地区、特定街区、防火地域・準防火地域、景観地区、風致地区、駐車場整備地区、緑地保全地区、流通業務地区、生産緑地地区、伝統的建造物群保存地区など
④有休土地転換利用促進地区
⑩被災市街地復興推進地域
⑤地区計画等地区計画、歴史的風致維持向上地区計画、防災街区地区計画、沿道地区計画、集落地区計画
C  ⑥都市施設交通施設道路、都市交通鉄道、駐車場、自動車ターミナル等
公共空地公園、緑地、広場、墓園等
供給処理施設水道、電気、ガス、下水道、ごみ焼却場等
水路河川、運河等
教育文化施設学校、図書館、研究施設等
医療福祉施設病院、保育所その他の医療施設または社会福祉施設
市場、と畜場、火葬場
一団地の住宅施設
一団地の官公庁施設(50戸以上の集合住宅とその附帯施設)
流通業務団地
電気通信・防風・防火・防水・防雪・防砂・防潮施設
D市街地開発事業⑦市街地開発事業土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業、市街地再開発事業、新都市基盤整備事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業
⑧市街地開発事業の促進区域市街地再開発促進区域、土地区画整理促進区域、住宅街区整備促進区域、拠点業務市街地整備土地区画整理整理促進地域
⑨市街地開発事業等の予定区域新住宅市街地開発事業の予定区域、工業団地造成事業の予定区域、新都市基盤整備事業の予定区域、面積20ha以上の一団地の住宅施設の予定区域、一団地の官公庁施設の予定区域、流通業務団地の予定区域

その中で、「ここは住居メインのエリア」「ここは商業エリア」といったように、エリアごとの特性に合わせて網をかけているのが「地域地区」です。

地域地区は市町村が決定

地域地区は、細かく制限するものなので、市町村が決定します

地域地区の21種類一覧

地域地区は、その目的によって大きく「土地の利用」「高さ」「都市施設」「防災」「環境」の5つに分類されます。

代表的なものは以下の通りです。

分類名称
土地の利用に関するもの用途地域(一番重要)
特定用途制限地域
特別用途地区
特定用途誘導地区 など
高さに関するもの高度地区・高度利用地区
高層住居誘導地区
特例容積率適用地区 など
都市施設・防災等駐車場整備地区
防火地域・準防火地域
特定防災街区整備地区 など
都市環境を守るもの景観地区・風致地区
緑地保全地域
生産緑地地区
伝統的建造物群保存地区 など

これらの中でも、私たちの生活や相続時の土地評価に最も深く関わってくるのが「用途地域」です。

最も重要な「用途地域」と建築制限

用途地域は、住居、商業、工業など、土地の使い分けを定めたもので、大きく分けて13種類あります。

「どの用途地域か」によって、建てられる建物の種類や大きさが決まります。

用途地域ごとの建築可能な建物一覧

主な用途地域と、そこで建築できる建物の関係は以下の通りです。

例えば、「工業専用地域」には住宅を建てることができません。

第1種低層 第2種低層第1種中高 第2種中高第1種住居 第2種住居 準住居近隣商業 商業準工業工業工業専用
住宅、共同住宅、寄宿舎×
幼稚園、小・中・高校××
図書館、神社、寺院、診療所
大学、病院×××
店舗・飲食店(小規模)△ ※一部可×
ボーリング場、ホテル、旅館××△ ※一部可××
パチンコ屋、カラオケボックス××△ ※一部可××
工場(環境悪化の恐れなし)××△ ※一部可
工場(危険性が大きい)×××××

※◯:建築可、×:建築不可、△:面積や階数により制限あり

土地の価値を決める「容積率」の制限

用途地域が決まると、その土地に建てられる建物の延べ床面積の限度(容積率)が決まります。

容積率が高い土地ほど大きな建物が建てられるため、相続税評価額も高くなる傾向にあります。

容積率は、以下の2つのうち「小さい(厳しい)ほうの数値」が適用されます。

  1. 指定容積率:都市計画で用途地域ごとに定められた数値(例:200%など)
  2. 基準容積率:前面道路の幅員によって計算される数値

道路幅員による容積率(基準容積率)の計算

前面道路の幅員が12m未満の場合、以下の計算式で求めた数値が「基準容積率」となります。

用途地域計算式
住居系の地域前面道路の幅員(m) × 40%
その他の地域前面道路の幅員(m) × 60%

【計算例】

指定容積率が200%の「第1種住居地域」で、前面道路の幅員が4mの場合

  • 指定容積率:200%
  • 基準容積率:4m × 40% = 160%

この場合、160% < 200% となるため、この土地の容積率の上限は160%に制限されます。

このように、たとえ指定容積率が高くても、接している道路が狭いと大きな建物は建てられません。

敷地が2つの地域にまたがる場合の評価

広い土地などの場合、敷地が「商業地域」と「住居地域」など、2つの異なる地域地区にまたがっていることがあります。

この場合、建築制限や建ぺい率・容積率はどのように決まるのでしょうか?

用途制限(建てられる建物の種類)

敷地の「過半(50%超)」を占める地域の制限が、敷地全体に適用されます。

例えば、敷地の60%が商業地域、40%が住居地域の場合、敷地全体に対して商業地域の用途制限が適用され、本来住居地域には建てられない店舗なども建てられる可能性があります。

建ぺい率・容積率

それぞれの地域の面積割合に応じた「加重平均(按分計算)」を行います。

過半主義ではなく、それぞれの面積に応じて計算した数値を足し合わせたものが、その敷地全体の限度となります。

相続税評価においても、またがっている土地は計算が複雑になるため注意が必要です。

建ぺい率とは

建ぺい率とは、建築面積の敷地面積に対する割合を%で表したもので、この土地にどれぐらいの規模の建物を建てることができるのかわかる指標です。

建ぺい率(%) = 建築面積 / 敷地面積 × 100

建築面積は、水平投影面積(すいへいとうえいめんせき)です。水平投影面積とは、建物を真上から見たときの面積で、凹凸や斜面があっても、水平とみなして測定するものです。

建ぺい率画像byいくらチャンネル

建築面積(水平投影面積)の求め方

  1. 最も大きな1階部分が、建築面積となる。
  2. 2階の突出している面積も建築面積となる。
  3. ひさしやベランダ、軒(のき)の長さが1m以上の場合は、その先端から1m下がった部分(L-1m)までを、建築面積に算入する。

水平投影面積が明確でない場合は、建物登記簿上で「最も面積が大きい階」を敷地面積で割ります

カーポートイメージ画像byいくらチャンネル

写真のような屋根付き駐車場(カーポート)物置に注意が必要です。
これらも建ぺい率に算入されます。新築の際、建ぺい率を抑えるため役所の検査が終わった後に、カーポートを付けたり、物置を設置されたケースがよくみられます。

建ぺい率オーバーしていることが多く、売却するときには「違反建築物」として不動産重要事項説明書に記載が必要です。また、買主から指摘された場合、撤去費用が必要になることがあります。

建ぺい率は、通風や採光の確保、防火上の観点から用途地域に応じて定められ、敷地に一定割合以上の空地(くうち)が確保されるようにしたものです。

用途地域建ぺい率(%)①防火地域内で耐火建築物の場合(+10%)②特定行政庁が指定する角地(+10%)①と②の条件を満たす場合(+20%)
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
田園住居地域
工業専用地域
30
40
50
60
40
50
60
70
40
50
60
70
50
60
70
80
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
準工業地域
50
60
80
60
70
制限なし
60
70
90
70
80
制限なし
工業地域50
60
60
70
60
70
70
80
近隣商業地域60
80
70
制限なし
70
90
80
制限なし
商業地域80制限なし90制限なし
用途地域の指定の無い区域30
40
50
60
70
40
50
60
70
80
40
50
60
70
80
50
60
70
80
90

すでに建物が建っていて、物件調査をする際は、実際の建ぺい率を計算して、制限の範囲内におさまっているかをチェックします。

なお、建ぺい率は、各自治体によって上限が定められています。調査している不動産の建ぺい率を調べる場合はGoogleYahoo!で「〇〇市 建ぺい率」と検索すれば調べることができます。

まとめ

地域地区は、快適な街づくりのために土地の利用を制限する重要なルールです。

特に「用途地域」と「道路幅員による容積率制限」は、土地の価値(相続税評価額)に直結します。

  • 自分の土地がどの「用途地域」かを確認する(自治体のHPなどで確認可能)
  • 前面道路の幅員を確認し、容積率が制限されないかチェックする
  • 敷地が複数の地域にまたがる場合は、過半の判定や按分計算が必要になる

土地の評価は非常に専門的な知識が必要です。「自分の土地にはどんな制限があるのか」「相続税評価額はいくらになるのか」など、不明な点があれば専門家である税理士に相談することをおすすめします。

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以下の記事では、税務処理に詳しい税理士をご紹介していますので、ご参考にして下さい。

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